第4章 きいろのとびら【黄】
「くろば?」
「へ、え?」
「何ボーッとしてんの?ほら、ちょっとコッチ」
そうるぅとが言った瞬間前を見ると、遠くから自転車がこちらに向かって走ってくるのが見えた。
るぅとは私と繋いでいた手を一度離し、反対側の手で繋ぎ直してくれた。
車道側をるぅとが歩く。
ほら。
またそんな男の子らしい事しちゃって…
久々に会ってこんな事されたら、意識しちゃうよ…
「くろば?どうしたの?」
「う、ううん。何でもないよ?」
「そ?」
そう言って私の顔を覗き込むるぅとは、やっぱりいつも通りの可愛いるぅとで。
二人で手を繋ぎながらしばらく歩き、目的のカフェへと辿り着く。
「くろばは何飲む?」
「んーと、カフェオレかミルクティーで悩んでる…」
「じゃあそれ二つ頼んで半分こしよ?」
「うん!ありがとうるぅと」
さりげなく、いつも私の事を大事にしてくれてるるぅと。
本当、るぅとと一緒に居られて嬉しいな。
注文した飲み物が運ばれてきて、それを飲みながらしばらく話していると、あっという間に時間が過ぎていった。
「あ、くろば。買い物行こうとしてた時間過ぎちゃった」
「あ、本当だ」
「ゴメン、気が付かなくて…」
「ううん、私こそ!それに、るぅとと久々に顔見れて喋れたから、楽しくて…」
そう私が言うと、はにかみながら笑うるぅと。
あー、もう本当に可愛い。
「…じゃあ、くろばの家、行く?」
「へ?買い物は?」
「僕も久々にくろばに会えたから、もうちょっとくろばと喋りたいかも…」
るぅと…!!
「うん!じゃ私んち行こっか!」
そう言って立ち上がると、るぅとも立ち上がってが私の方の椅子を引いてくれた。
「あ、ありがとっ…」
「いえいえ♪」
そう少し鼻歌混じりにるぅとが言った。
「あ、お会計…」
「あ、僕行ってくるから先に出口の方行ってて?」
「うん」
デート中のるぅとは本当紳士。
ううん。
まさに王子様そのもの。
エスコートが完璧だ。
…今までの彼女にも、同じような事してたのかな。
ふと、そんなネガティブな感情が頭の中に浮かんできた。