第3章 むらさきいろのやきもち【紫】
まるで夢心地なこの日から、俺達はビジネスパートナーから仲の良い友達という関係を経て、彼氏彼女の関係になった
そして、その次の日のこと。
ーーピンポーンーー
『はい』
『あ、くろばですっ』
『うん、待ってたよ』
くろばは昨日約束した通り、今日から毎日、無理のない程度にご飯を作りに来てくれる事になった。
「お、お邪魔します…」
「う、うん」
「な、なんかなーくんの家に来るの久々だね!」
「そ、そうだね…!」
「「……」」
部屋に広がる静寂。
やばい、くろばが俺の家に来てる。
こんな事は前にもあったけど、その時は仕事仲間としてで。
「な、なーくん何か食べたいものある?」
「へ?あー、特にないけど…」
「じゃ、じゃあパンケーキ作るね!オーソドックスなやつになっちゃうけど、今度作る時はまたメンバーの誰かに練習付き合ってもらって…」
「え、ちょっと待って…?」
練習ってどういう事…?
それにまたって。
「ね、ねえ。それってどういう事?」
「あ、え、えっとね…?」
くろばから話を聞くところによると、どうやら昨日のサンドイッチや今まで俺にくれていたの手作りの差し入れ達は、今まで全てメンバー達の誰かに味見係をしてもらってから渡していたと言うのだ。
前にくろばの作ってくれた差し入れの話になった時に、他のメンバーも食べたと言っていたから、俺だけに作っていたなんて聞いたのは今日が初耳だった。
「な、なんで言ってくれなかったの?いつもならメンバーとどこに居るとか何してるとか、全部連絡くれてたのに…」
あ、いや。
今思えば、それもちょっとおかしいのか?
「だ、だって…そんな事本人に報告したら、なーくんの事が好きってバレちゃうかなって思ってっ…」
その言葉を聞いた瞬間、くろばをその場で抱き締めた。
「な、ななな、なーくん…!?」
「嬉しい…でも、これからは他のメンバーに味見させないで?」
「へ…?」
「味見も本番も、これからは俺だけにして?」
「…う、うん」
嫉妬深くてゴメンね?
ビジネスパートナーも友達も、もちろん、恋人としても俺が一番じゃなきゃやだよ?
くろばを抱き締め続けていると、くろばもおずおずと抱き締め返してきた。