第3章 むらさきいろのやきもち【紫】
「なーくん、ヤキモチ焼き屋さんだったんだね…?」
「そうだよ?知らなかった?」
「し、知らなかったよ」
「こんなもりさん、嫌…?」
「…う、ううん。なんか可愛い」
そう笑ったくろばの方が何百倍も可愛くて。
思わずくろばの小さな唇にキスをした。
「…っ!」
「くろばの方がもっと可愛いよ?」
「も、もうっ!なーくんってば…!」
お腹は少し空いていたけれど、今はこうしてくろばと一緒に居たい。
「…あ」
「ん?どうしたのなーくん?」
「俺達、一緒に住もっか」
「へ?」
「だって、毎日通ってもらうのも大変だろうし、俺も仕事で外に出てる時に、くろばが家で待っててくれてるって思ったらその方が嬉しいし仕事も頑張れるし」
うん、我ながら良いアイデアだ。
あとはくろばがこの案に同意してくれるかどうか…
「ほ、本当に…?」
「うん。嫌だ…?」
「そ、そんな事ない…!めちゃくちゃ嬉しい…!!」
くろばの俺を抱き締める力が強くなった。
あ、これ…
マズイかも。
「ご、ごめんくろば…」
「え?」
「ちょ、ちょっとだけ離れてくれる?」
「え…どうして?」
くろばの顔が少し歪み、俺の胸の中で上目遣いで見つめてくる。
「もしかして、あんまりくっつかれるの嫌な人?」
「…ううん違う。むしろ、めちゃくちゃ嬉しいし、くろばとくっつくのは好き」
「じゃ、じゃあなんで?私…もうちょっとだけなーくんとこうしてたいよ」
…くろば。
「お、俺もそうしたいのは山々なんだけどね…」
「うん…」
「…も、もりさんのもりさんが…ね?」
「…もりさんのもりさ…」
「「……」」
「…へっ、え、えぇっ…!!??」
ごめんねくろば…
もりさんも、立派な成人男性なのです。
だから、これからも俺達のペースで。
ゆっくり愛を育てていきたいな。
〜End〜