第3章 むらさきいろのやきもち【紫】
「分からない?」
俺がそう聞くと、再びくろばが黙りこくる。
だけど今度は、泣きそうな顔ではなく、顔を赤くして潤んだ瞳で。
「な、なーくん…」
「俺ね、くろばちゃんの事、ずっと前から好きだったんだ」
「!!」
俺の言葉を聞いたくろばは、思わず両手で顔を覆い隠した。
「くろばちゃんは、俺の事好き?」
「…す、好き、です」
くろばから聞いたその言葉に、身体中が震える感覚がした。
けど、そんな気持ちを表に出さないよう、なるべく自分が出来る限りの冷静を装い、くろばに再び質問を投げ掛けた。
「それって、どういう好き…?」
メンバーの中での一番?
友達の中での一番?
それとも良いビジネスパートナーとして?
「ねえ、聞かせて…?」
俺がそう言うと、顔を覆い隠した手の隙間から、潤んだくろばの瞳が現れた。
「な、なーくん…」
「ん。なあに…?」
「は、恥ずかしすぎてヤバイですっ…!」
ちっちゃな手で、ちっちゃな顔を覆い隠しているくろばの両手を掴み、そのままゆっくりと下に降ろさせた。
「な、なーくっ…」
「嫌だったら言って?」
そう言って自分の顔をゆっくりとくろばに近付けていくと、くろばの目がギュッと閉じられた。
…可愛い。
そのままくろばの唇に自分の唇を重ねても良かったのだが、チュッと音を立てて、くろばの頬に唇を落とした。
「ふぁっ…!」
「好きだよ…?くろばちゃん」
「…わ、私も…なーくんが好き…」
そう言ったくろばとがっつり目が合う。
もう一度、今度は本当に唇にキスをしようかと思っていたら、自分の視界からくろばが消えた。
チュッ。
そう俺のすぐ耳の近くで音がして。
「…ッ!?」
「し、仕返し…」
顔を真っ赤にしたまま、くろばがそう俺に告げた。
あーもう…
「くろばちゃん、可愛すぎ…」
「な、なーくんだってカッコ良過ぎだよ…!」