第13章 望むのは
そう彼に告げると彼はきょとんとしておいおい、俺も男なんだぞって珍しく真面目な口調で言ったからその意味をよくよく考えて赤面したのだった。
でも今彼はびっくりして固まっている私の身体に長い腕を巻き付けてじわじわと体重をこちらにかけてきている。
「ビックスロー、何で今日ギルドに居なかったの?」
「んー?だってリアの誕生日だろ。」
良かった、覚えていてくれた。でも覚えていたならなおさらギルドに来てくれるのでは、と思うのは私のわがままだろうか。
「ビックスローが来てくれないから、忘れてるのかと思った。」
「そんな訳ねぇだろーが。」
「じゃあどうしてギルドじゃなくて私の家に居たの?」
「んー?何でだろーな??」
「ちょっと!揶揄わないで。」
「ハハ、悪ぃって」
「わりー、わりー」
完全にはぐらかそうとしてる。でも今日の私はこんなことじゃ流されないんだから。何てったって今日は誕生日だ。多少わがままを言っても聞いてくれる日だ。たぶん。
「理由を言ってくれなきゃヤダ。」
彼の腕の拘束を何とか緩めて体を反転させ、彼の兜をがっしりと掴む。その隙間から僅かに目が見えるが、そこから彼の感情を読み取れる者は少ない。私を除いて。
今の彼は、何だかバツが悪そうな感じだ。
「ねぇ、ビックスロー…?」
ダメ押しとばかりに普段は出さない甘い声で聴いてみる。腰に回っていた掌がぴくりと震えて、兜の奥の彼の目が揺れた気がした。もう少しだ。
「…おいっ」
邪魔な兜があるからいけないのだ。両手でその兜を引き抜き、後ろのソファーに投げ捨てる。ソファーで跳ねた兜が床に落ちて音を立てた。
今度は彼の頬を直接両手で固定してその眼を直接じっと覗き込む。
やがて観念したのか彼はため息をつきながら白状した。
「ギルドの連中の相手で一杯一杯になるだろ、お前。家なら俺一人のリアだ。」
「…そんなこと、考えてたの?」
「…悪かったな、女々しくて。」
「言ってくれたら一緒に家に居たのに。一日中。」
「意味わかってて言ってるか…?」
「もちろん。」
「覚悟しろよ。」
「お手柔らかにね。」
顔を僅かに朱に染めた彼を心底愛しいと思った。恥ずかしさを誤魔化すように深くキスをされる。