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フェアリーテイル 【短編集】

第10章 心契


 希望の炎は彼を救ってくれただろうか。結局私は最後まで、彼を救うことなどできなかった。ナツとガジルに頼ってしまった。

 戦闘音が止んだカルディア大聖堂の方からナツたちの声がする。ラクサスが負ける姿など初めて見たし、そんな姿見たくないと思ってたのに、今はそれが嬉しいだなんて。

 ―私はつくづく、最低な女だ。



 彼の処分はあっさり決まった。破門だそうだ。ギルドを出て行く彼の背にかつて重くのしかかっていた重圧と焦燥、そして迷いがないことに目を細め、私はこれからのことを考えた。

 私は妖精の尻尾にはもう、いられない。誰よりもギルドのことを想ってきたあの人がギルドから去るのだから、それを知っていながら止められなかった私がギルドにいる資格などない。

 ギルドのカウンターからそっとギルドマークを消す魔結晶を持ってマグノリアのとある広場に向かう。

 魔結晶をギルドマークの上に当てて深く息を吸う。魔結晶が淡く光り出すのが見え、そして―

 バキッ―

「え?」
「…何してやがる、リア。」
「ラ…ラクサス。」
「妖精の尻尾を抜けるつもりか。」
「…ええ。」
「何でだ。」
「…私に妖精の尻尾に残る資格はないわ。」
「…俺のせいか。」
「自惚れないで。自分で決めたことだわ。」

 彼にこれ以上責任を感じさせるわけにはいかなかった。彼を睨みつける。その目が思った以上に後悔に染まっていることに気付いた。いつも勝手に何もかも背負い込んで、自分をがんじがらめにしてそして傷つくのだ。

「俺のせいなんだな。」
「適当なこと言わないで!貴方にはもう関係ないでしょう!?放っておいてよ!」

 いい加減我慢の限界だった。どうして私達には何も背負わせてくれないんだろう。どうせ雷神衆のみんなにも俺だけが破門になればいいと言って出てきたんだろう。

「…リア。」

 踵を返して広場から去ろうとする私を引き留めようとする声を無視して俯く。

「リア。」

 ぐんっと左手が後ろに引かれた。





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