第10章 心契
いつからだろう、あの人の考えていることが分からなくなってしまったのは。
いつからだろう、あの人が私を見てくれなくなったのは。
いつからだろう、私があの人の過ちを、見て見ぬふりをするようになったのは。
「ナツ…。お願い。あの人を止めて。じゃないと、あの人今度こそ一人になっちゃう…!」
「分かってる!!」
ナツが向かったカルディア大聖堂の方で破壊音がする。もはや動かない体を横たえて私は後悔ばかりしてる。
『ラクサス!言いすぎよ…!彼らは仲間でしょう?』
『うるさいぞリア、誰に向かって説教垂れてんだ』
『このままじゃ取返しのつかないことになるわよ』
『…それはオレがマスターになれなけりゃお前ぇが困るからか?』
『違う!私は貴方が一人にならないようにってー』
『消えろ!お前もどうせ俺がじじいの孫だから近づいてきたんだろうが!!!!』
『そんなわけない…、私は、』
『失せろって…言ってんだ‼二度とその面見せんじゃねぇ。』
私の前から消える雷。頬を流れた涙。その涙と共に零れた大切なものを、彼の心を、私は掬い取れなかった。そして彼の祭りは始まってしまった。
『ラクサス…。私が貴方を止めてみせる。』
『いつも俺の後ろに隠れてたお前がどうやって止めるってんだ、リア?ああ?』
『貴方を傷つけてでも。』
『ハッ!!笑わせんな。雑魚が。』
勝負はあっけなくついた。容赦のない攻撃、私を見てはくれない目、かつての恋人が傷つくさまをみて嗤う人。
『妖精の尻尾を最強のギルドにするのは俺だ。そこに弱いお前は必要ねぇ。』
心に深く刺さる言葉を残して消える彼。心が血飛沫を上げて壊れた気がした。でも、彼の心は私の心よりもずっとずっと痛かったに違いない。どうして彼が壊れてしまう前に気付けなかったのだろう。ずっと一緒にいたはずなのに。いや、気付いていながらも言い出せなかった。嫌われることが何より辛かったから。
恋人面するなと言う彼の声が木霊した。その通りだった。自分の保身のためにあの人の心を犠牲にしたのだ。
私は、醜い-