第9章 ローの葛藤
「……なんだ」
平静を装い、起き上がる。
「朝ご飯出来たから、ベポが呼んでこいって。ごめん…寝てたよね?」
真鈴と目が合った。
ドクン、と心臓が高鳴る。
「…別に構わねェ。朝飯な、今行く。」
寝台から降り、真鈴の横を通り過ぎ、部屋の外に出る。
真鈴が後からついてくる。
「……。」
チラッと後ろを見る。
真鈴は、海水で濡れた床で、滑らないようにヒョコヒョコ慎重に歩いて、ローについていく。
その様子はまるでー…
(……ヒヨコみてェだな)
クスッと微かに笑みがこぼれた。
「‼︎ …ロー? 笑ってんの?」
ローがピタリと立ち止まり、こちらを振り向いた。
「…笑ってねェよ。」
「いや、笑って」
「ねェ。」
「……はい。」
きびすをかえし、再び歩き始める。
(今絶対微かに笑ってたよ…。笑うの珍しいから、もっと見たかったのに。…なーんて)
ふと、足元の注意を怠った瞬間、海水で足を滑らせた。
前のめりになる。
「きゃ⁉︎」
「なっ…⁉︎」
ローは真鈴を抱えようと腕を伸ばしたが、間に合わなかった。
ガツッ‼︎
「痛っ」
とっさに柵を片手で掴んだが、それが仇となり、変にこけてしまった。
柵にもう片方の腕をぶつけ、床に足をぶつけた。