第15章 ヨゾラ島
うなだれたシャチはほっておき。
船員4が人形を抱えて真鈴に近づいた。
船員4「これ差し上げます‼︎」
「え…わっ‼︎」
真鈴に人形を突き出した。
船員4「どうぞ‼︎」
「…いいの?」
真鈴は人形をギュッと抱きしめながら言った。
船員4「いいですよー‼︎ あ、ちなみに、こいつが真鈴ちゃんのために取ったんですよ?」
ビシッとシャチを指差した。
シャチ「あ、テメェ‼︎ 言うなよ‼︎」
船員4「いいじゃねェか、別に。」
真鈴がシャチの元へ駆けた。
「ありがとう‼︎」
シャチ「い…いえいえ、そんな大したものじゃねェし…」
(…んだよ、そんな笑顔…反則だろ…っ)
シャチの顔が赤くなっていく。
「……。」
ローはそのやりとりを見て、心にムカつきをおぼえた。
「可愛い…ベポにそっくり…フカフカだぁ…♡」
真鈴はベポそっくり特大人形を先程より強く抱きしめた。
シャチ「き、気に入ってくれてなによりです…」
「うん‼︎」
「…。」
ローの眉間にしわがより、あからさまに不機嫌そうな顔をしている。
「‼︎」
そんなローに気付いたベポは、ローのそばにやって来、耳元で囁いた。
「…キャプテン、もしかして、嫉妬してます?」
「…。」
「真鈴さん、嬉しそうですものねェ…。」
「…あぁ」
「盗られちゃいますよぉ…シャチに」
「そ…んなことあってたまるか‼︎」
『⁉︎』
いきなり大きい声で言ったので、一同がローの方に一斉に振り向いた。
「あ…」
「ロー⁉︎ どうしたの、いきなり…」
真鈴は人形を抱きしめたまま、こちらを見ている。
そんな彼女を、鼻の下を伸ばしながらシャチがニコニコ笑っている。
「…っ」
ローは真鈴に近づきー…
「ーキャ⁉︎」
『⁉︎』
船員達の前で堂々と、人形ごと抱きしめた。
「ちょ、ロー⁉︎」
真っ赤になっている真鈴を無視し、ローは話を続ける。
…特にシャチ視線を合わせながら。
「ベポには言ったが…お前らには言ってなかったな…」
まさか…と船員一同は思った。
特にシャチが。
「こいつ…俺の“カノジョ”になったから。」
『!!』
(うそーん…)
…シャチの脳内に失恋の鐘の音が虚しく鳴り響いたのだった。