第15章 ヨゾラ島
しばらく歩いているが、一回も屋台で何か特別なことをしていない。
「おい、真鈴…遠慮なんかいらねェ。買いたいやつあったら言え。」
「…いいの?」
「あぁ。…屋台見るだけの為に来たのか? 違ェだろ?」
「うん……あ」
真鈴の歩みが止まった。
「何かあったか?」
「あれ…食べたい、な…」
「どれだ?」
真鈴が要求したものは、林檎飴だった。
(この世界にもあるんだ…林檎飴。)
実を言うと、林檎飴は真鈴の大好物だ。
祭りに来れば必ず買っている。
「…何だ、ありゃあ?」
「え、知らないの⁉︎」
(あんなに美味しいものを⁉︎ もったいない‼︎)
「あぁ…初めて見た。第一、祭りなんて滅多に行くもんじゃなかったしな。…で、あの丸くて真っ赤な物体は何だ? 林檎に見えるが…食い物か?」
「食べ物だよ。“林檎飴”っていう。…甘くて美味しいよ? 林檎丸々一個に飴がついてるの‼︎ 私、大好物なんだ♪」
「へェ…林檎飴、か。」
「ローも食べてみなよ、美味しいから‼︎」
「俺は…いい。」
「そう…」
屋台に近づく。
幸いにも、空いていたのですんなり店に入ることができた。
「いらっしゃい‼︎」
「…これ、一つくれ。」
「大きいのか小さいのか、どっちだい?」
「…おい、どっちだ。大きいのでも構わねェよ。」
「う、うーん…」
(大きいの食べたいけど、ものすごく時間かかっちゃうからな…)
「…小さいので大丈夫です‼︎」
「はいよ、じゃあ100ベリーね‼︎」
「あぁ。」
ローはちょっきし100ベリー払った。
「はい、お嬢ちゃん‼︎ 毎度ありー‼︎」
「ありがとう、おじさん♪」
真鈴は店主から林檎飴を受け取り、店を離れた。
「…食べていい?」
「おう。」
外装を剥がし、飴を食べ始めた。
「…甘〜い♡ 美味しい‼︎」
真鈴は幸せそうな表情をしている。
ローはそんな真鈴を見て和んでいた。
「ねェ、やっぱりローも食べてみなよ‼︎ 一口でいいからさ‼︎」
真鈴がローの唇に林檎飴を押し付けた。
「⁉︎」
(か、かか関節キス…⁉︎)
ボッ、とローの顔が一気に赤くなった。
…実際は、真鈴がくち付けた所と別のところを、ローの唇に押し付けたのだが。