第1章 イメージチェンジ【岸辺露伴】
「ろはーん!ちゃんが遊びに来ましたよ〜!」
彼女の姿を一目見て、そんな思惑は一瞬の内に吹き飛んだ。
そしてその次に、目の前にいる女性は、本当に彼女なのかとも___偽物なんじゃあないか?新手のスタンド能力……?いや、でも、しかし。声のトーンや喋り方は彼女そのものだ。そう、まるで見た目だけが別の誰かになってしまったような。
そうだな、この表現が一番しっくりくる。でも、何故……?
「な、何やってんだ貴様……」
ボクがやっとの思いで絞り出した言葉に、彼女は頬を赤く染め上げ「えへへ、露伴せんせの好みに近づきたくて……お気に召しました?」と言った。
そこでようやく、ボクは全てを理解した。あの時適当に話した女性の好み……それに気づいた時、思わずこめかみを押さえて天を仰いだことは説明するまでもない。
もちろん彼女に対してではなく、知らず知らずのうちに大きな失態を犯していた自分に対してだ。
「……せんせ?嫌でしたか……?」
「はァ〜〜〜〜〜……全く、君って奴は……嫌じゃあない。嫌なわけがないだろう。……とても綺麗だぜ」
ボクが目を逸らしながら言えば、彼女は周りに華が咲き乱れそうな勢いで「本当ですか?!嬉しいです、せんせにそう言って貰えて…!」と、無邪気に喜んだ。
彼女の金色だった髪は黒に染め直され、頭の上で一つ括りにしていたのを下ろしてストレートにしていた。白のレースがあしらわれたワンピースに身を包み、いつもの華美な化粧もせず、限りなく素顔に近い。
本来の彼女の顔の造形は、こんなにもあどけなかったのかと目を見張った。中身こそ変わっていないが、見た目だけで言うならばあの日ボクが言った『カフェテラスで読書する姿が絵になる女性』そのものだ。
だがボクは、素直に喜べなかった。彼女の好きな物で自分を彩る姿を好ましく思っていたからだ。綺麗に切りそろえられた爪を見て、ボクの何気なく放った一言で彼女に無理をさせてしまったと、柄にもなく____あぁ。認めよう。ボクは心底彼女を愛しく思っているのだ。ボクに好かれようと、必死に好みに近づこうとするそのいじらしさを、たまらなく愛らしいと思っている。