第4章 gelato【ジョルノ】
「___ですが、少なくとも僕は、心から大切な人と過ごす時間を無駄だとは思いませんけどね」
貴方と過ごす時間を無駄だなんて一度も思ったことはない。むしろ、一分一秒だって惜しいというぐらいなのに。
彼女の恋人というポジションにいながら胡坐をかいているその男が、僕には酷く憎らしいもののように思えた。
「……へぇ、意外」
彼女の瞳孔は、心底珍しいものでも見たかのように大きく開かれた。
どうしてそんな顔をされなくちゃあいけないんだ。仕事の合間をぬって、護衛も振り切ってまで僕はあなたとの時間を欲しているというのに。
それはもう、喉から手が出るほどに。
「___僕の隣にいれば、貴方はいつでもフラゴーラとブルーベリーが食べられる」
「ふふ、確かにね」
「オレンジジュースだって飲み放題ですよ」
「待ってよ、もしかして口説いてるの?」
「そう聞こえませんでしたか?」
予想外だったのだろう、僕の突然の告白に彼女は頬を染め、「えっ」とか「でもっ」なんて、頓珍漢な言葉を発していた。
貴方が貴方のままでいられない相手より、僕を選んで欲しい。
そしてどこまでも傲慢な僕を許してほしい。
所謂『ボスの女』という肩書きは、酷く重たい。時には命を狙われるだろうし、まず間違いなくこれまでのような生活には戻れないだろう。
それでも僕は、貴方が欲しいんだ。
「ジョルノが私のこと好きだなんて、あり得ない……」
「僕は本気ですよ。ですが、貴方が僕と同じ気持ちじゃあないことぐらい分かっています。ですから返事はいつでも構わない___これからは遠慮せず落としにいくので、覚悟してくださいね?」
僕はこれが宣戦布告とでもいうように、一輪のバラに変えた。
「貴方にはこっちの方がお似合いです」
「……そんなの、ズルいよ」
「いい返事を期待していますよ」
これでもかと顔を真っ赤に染め上げた彼女をみて、僕は近い将来のことを考えて笑うのだった。