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souvenir《ジョジョの奇妙な冒険》

第1章 イメージチェンジ【岸辺露伴】


午後十六時。二人分のケーキと紅茶の入ったティーカップをトレイに乗せて部屋に戻ったところで、ボクはしまった、と思った。ついでに言えば、このくだりをしたのは今日が初めてじゃあない。

「(あいつ、今日も来なかったな)」

持ってきてしまったものは仕方がない。ボクは二人分のケーキと紅茶に手をつけた。一つはいちごの乗ったショートケーキ、もう一つは彼女の好きなモンブラン。
彼女いわく『モンブランのしっとりとした甘みが上品でいい』らしい。金髪ミニスカ女が何を……と思ったが、口には出さなかった。彼女と初めて出会ったのが二ヶ月程前なことを考えると日常に戻っただけなのだが、はたして彼女のいない部屋はこうも広かったのかと、口内でクリームを溶かしながら考えた。
そもそも、彼女は貴重な青春時代のさなかにいる華の女子高生であり、この岸辺露伴__とはいえ男の家で過ごすことにその貴重な時間を割くべきではない。脳天気で抜けているところはあるが、彼女の持ち前の明るさなら友達だっているだろうに、何故そうまでして。

『私さ〜、露伴せんせのこと好きだわ』

まるで今夜の夕食の話でも持ち出すかのような、実にあっけらかんとした言葉だった。あれからボクは、彼女の放った言葉の真意を幾度となく思案している。あの時感じた小さな違和感は、この二週間で、ボクの中でとんでもなく大きな塊としてその形を変えていた。ヘブンズ・ドアーで見ておくべきだったか……そう思っても後の祭りだ。

正直に言おう。チア部の女子のように頭上でまとめあげた髪を揺らしながら『ろはーん!』と間の抜けた声でボクを呼び駆け寄ってくる姿は、見ていて飽きない。ケーキを頬張りながら『露伴せんせ、美味しいです!このケーキ、すっごく美味しい!』とボクに語りかける笑顔も、まぁ悪くないんじゃあないかと思う。
というか、同学年の男が見ればイチコロなんじゃないか。まぁ本人は無自覚だろうが。
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