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souvenir《ジョジョの奇妙な冒険》

第3章 飲んでも呑まれるなとは言うけれど。【ナランチャ】


ナランチャは、未だ彼に抱きついている無防備な彼女の頭を自由な方の手で撫で付けると「好きだから、には幸せになって欲しいんだ」と呟いた。まるで大切な宝物を扱う時のような仕草に、フーゴとミスタはそれきり何も言えなくなった。

ギャングである彼らは、ナランチャの言葉の意味を正しく理解した。それは他人事ではなく、自分たちが組織の一員であり続ける限り、一生付き纏ってくることだったからだ。愛する女一人幸せにしてやれない、ましてや不安にさせるばかりの人生を相手に強いなくてはならない____他人の人生を背負う覚悟など、彼らの生きる世界では荷が重すぎる話だった。

「お前がそう思うんなら僕は何も言わない__ですがあえて客観的に言わせてもらうなら、この女はそういう次元でお前のことを見ちゃいないですよ」

はとにかく勝気な上に男勝りで、口より先に手足が出るような女だ。男有利のギャング世界で、ここまでやってこれたのはこのタフな精神力が大きいだろう。実際、酒さえ飲まなければ彼女は優秀なギャングだった。公私混同は無論せず、ナランチャとだって他のメンバーに対する接し方と何ら変わらない。

『女性ながらに突っ張って生き続けた結果、酒に頼ることでしか弱さを見せられないのならそれでもいい。好きにさせてやれ』

これは彼女の酒クズっぷりに、今日のように呆れ返っていたフーゴにブチャラティが言った言葉だ。どんな奴にも欠点はある。欠けたパズルのピースを埋め合うようなチームだからこそ、彼女はやっていけているのだとフーゴはそのとき実感した。それはまた、彼自身も然りだった。

「…ナランチャ、ちゅーして?唇に、とびきり熱いやつ」

「オイオイ、のヤツそろそろ帰らせた方がいいんじゃあねェか?この酔い方は良くねぇやつだぜ、明日に響く」

ナランチャの肩からムクリと起き上がった彼女は、開口一番にキスを求めて今度は彼の上に跨った。泥酔した彼女を幾度となく見てきた彼らにとって、この行動は彼女を帰らせるいい頃合を示すものと言っても過言ではない。普段彼女の酒癖をあまり気に止めていないミスタでも、さすがに今日の酔い方は良くないと思ったのか、珍しく心配していた。
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