第2章 露伴先生に触れようプロジェクト【岸辺露伴】
「おいおいおいおいおいおいおい、一体どういうことか説明してくれよ。君が男性に触れたいだなんて、そんなことにわかには信じがたい」
「そのままの意味ですよ。それと先生、今の発言撤回してください!私は男性に触れたいんじゃなく、先生に触れたいと言ったんです」
だからそれが分からないと言ってるんじゃあないか。
部屋の空気がどんより重たいのはひとまず今朝から降り続けている雨のせいにして、ボクは気を鎮めるために意味もなく飲んだ紅茶をカチャリと机に置いてから口を開いた。
「……分かったよ。協力しよう。ただしボクは、君が発作でも起こそうもんなら即座にやめるからな」
「ありがとうございます!先生大好き!」
「フン、調子のいいヤツめ」
こうして彼女の『露伴先生に触れようプロジェクト』(彼女が勝手に命名したのであって、ボクとしては非常に不本意なプロジェクトである)が開始されたのだ。
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結論から言おう。
全く進展しなかった。
「うぅ……ほんとすいません……」
「君が謝る必要はないし、そもそもボクはこのプロジェクトに反対だったんだ。結果は目に見えて分かっていたことだしな……気に病むことは無いさ」
このふざけたプロジェクトが始動してから早1週間、ボクと彼女は未だ指一本触れられずにいた。
ぐったりと項垂れた彼女を見て、ボクは一瞬ヘブンズ・ドアーで書き込んでやろうかとも思ったが、そうなると必然的に彼女の経歴も見てしまうことになる。
決して明るい人生を歩んできたわけでもない彼女のことだ、知られたくないこともあるだろう。
それに何より、自力で変わろうとしている人間をボクの反則技とも言えるスタンドで手助けするなんて野暮だとは思わないか?
「でも私、ぜったい諦めませんから……!」
「はァ〜〜〜〜〜……君はそういうと思ったよ。そこで、だ。ボクから君に、一つ提案がある」