第5章 返り討ち
…それでも
言って欲しい。求めて欲しい。
そう思ってしまう。矛盾してるってわかってるのに。
ワガママ、だよね。単なる。ホントに、子供みたいなわがまま…。
「…ね。どーしても、帰んなきゃダメ?」
「ダメ」
「すぐ?」
「…え?」
「まだ、もーちょっとは大丈夫だよね?時間」
「あ、うん…。もうちょっと、なら…」
「じゃあさ」
「うん?…っ」
きゅうって。抱きしめられた。
しょ、翔、ちゃん…?
「先に謝っとく。ごめん」
「?」
「わがまま言います」
え
「この温度も、残してって」
「おん、ど?」
「体は、ボディは、諦める。だから、それ以外。気持ちとともにお泊りしてって」
「???」
どゆこと?
「全部。このぬくもりも、このにおいも、この感触も…」
「んっ!」
背中の手が、ゆっくりと下がっていく。
「…その声も。全部、ウチに置いてって」
「翔ちゃ…」
「ひなた…。チュッ…」
「っ」
「パイでお腹いっぱいだけど…。ひなたも、食べたい」
「アッ…」
首に撃たれた唇から
本気が、染み込んでくる…。