第4章 刺客
「…ね。お泊りしたくなった?」
「…」
「ん?」
できないって、わかってるくせに…。
「意地悪」
「なんでよ。つか、どっちがだよ?」
「…」
それはコッチの台詞。こんな…こんな気分にさせて!
明日早いから、どうしても今日は泊まれない。わかってたよ、帰りたくなくなることくらい。会うの久々だし。絶対ズルズル後ろ髪引かれちゃうってことは。
でも
家に来たからには本人に会いたいじゃない!?
「…どうしても、今日食べてもらいたかったんだもん」
「うん。超ウマかった。ありがとう」
「…うん…」
「…」
ちょっと前に始めたお菓子作り。全然女らしい趣味とか特技がないって自虐的に話してたら、そう思うなら何か始めれば?って。フツーに翔ちゃんに言われて。それもそうかって。
慣れないながらも、自力でいろいろ調べながら試行錯誤。まだまだ素人のくせに、かなり難しいパイとかに手ぇ出しちゃって。食べるのは好きだけど、作ったものの味も妥協はできなくて。ど素人のくせにね?だから、食わせてってさんざん翔ちゃんに言われてたけど、絶対ダメって待たせ続けること…約二か月。