第3章 赦し
移動要塞の崩れる音でふと意識が浮上した。やはり、戦闘に参加しなかったことへの報告は必要なかったみたいだ。これでもう、罪を重ねずに済む。冥府の門に入ってからずっと、張りつめていたものが消えた。妖精の尻尾は私を2度も闇から引き上げてくれた。一度は妹を喪ったこと、そしてもう一度は冥府の門から。
彼らがゼレフを目覚めさせようとしているということを耳にした私は迷わず妖精の尻尾を去り、彼らの興味を誘うように能力で支部を潰して回った。思惑通り彼らは私に接触し、仲間に引き入れた。妹を喪った闇に付け込まれ、命令(マクロ)をかけられながらも私は彼らを欺き続けた。いつか妖精の尻尾が彼らを止めてくれる日が来ることを祈って。彼らに疑われないようにいくつもの罪を犯した。私に妖精の尻尾に戻る資格はないけれど、彼らの進む道を作ることができたのなら本望だ。
これからどうしようか。瓦礫にもたれかかりながらぼうっと考えを巡らせる。もう2度と顔を見ることはないと思っていた人の顔を見られただけでも良かった。
まだ各所に点在する闇ギルドの殲滅でもしようかしら―
ふと、カツカツとこちらにやって来る足音を聞いた。ハッと立ち上がろうとするが、まだ脱力感の残る体は言うことを聞いてくれない。