第3章 赦し
「何してる。こんなところで。」
「…ラクサス。」
耳慣れた低い声。これは、かなり怒ってる。どうやってはぐらかそう。
「オイ。聞こえてんだろ。答えろ。」
「これからどうしようかなって。」
「戻って来い。」
これは予想外の一言だ。
「…!な、に言ってるの。」
やっとのことで声を絞りだす。
「妖精の尻尾に戻って来い。」
「私が何をしたか分かってるの?あなた達を傷つけたのよ。私は裏切り者なの。」
「何も言わずに出てっただけだろ。俺はもっと酷ぇことしてるし、破門にもなった。」
「私は、赦されてはいけない。」
「お前は、エルフマンにとどめを刺さなかったし、俺や雷神衆の魔障粒子を取り除いた。戦闘に参加してもいなかった。」
「起きて…た、の。」
「冥府の門に入ってからも一人で闇ギルドを潰して回り、抹殺対象を見逃した。」
「なんで、知って…」
声が震える。
「お前が何も言わずに出て行ってから、俺だって何もしなかったわけじゃねぇ。黒髪の東洋人の目撃情報くらい調べりゃすぐわかる。マスターも、ナツもグレイもエルザも、妖精の尻尾の連中はお前を信じて待ってる。今もな。」
涙が止まらなかった。冥府の門に入って、彼らを護っていたつもりだったのに。
「護られてたのは私も一緒ってことね。」
「それが家族ってもんだ」
「貴方の口からそんな言葉が出るなんてね。」
「うるせぇ。行くぞ。」
こっちの返事を待つこともなく、真っ直ぐ来た道を歩いて行くその人。まだわずかに震えている体に鞭を打ってその人の後を追う。家族に、赦しを乞うために。