第12章 【番外編】 精一杯の賛辞を
ルーシィの授賞式のパーティーは純粋に楽しかった。
立食形式で、お酒も並べられている軽食も全てが素晴らしく、いろんな人から声を掛けられている今日の主役を見て誇らしい気分になる。
しかし、だ。
賑やかを通り越して喧しい会場の一角に目を向けるとため息が出る。テーブルの上に立ち上がって料理を貪るナツに、いつの間にか服を脱ぎ散らかすグレイ、漢だと叫ぶエルフマン…、とこんな調子でギルドがそのまま移動してきたようだった。
無論、それを窘める気力など私にはないので、ラクサスやその他良識のある人たちと少し離れたところで見守っていた。
「…うるせェ。」
「もう、気にするだけ無駄よ。」
隣でしかめっ面をしているこの男の呆れ具合も分からなくもない。でも私にはもっと呆れていることがある。
時は会場に着いた時にまで遡る。
ドレスを購入したブティックにお邪魔してみんな各々のドレスアップをして、時にはお互いに手伝って。
そうしてやっと完成した今日の装いは自分でも中々に納得のいく出来栄えだったのだ。無論、他の皆には劣るが。それでもいつもの劣等感をあまり感じないほどには、自信を持てた。
会場へ向かう馬車の中でミラにラクサスも褒めてくれるわ、と耳打ちされた時に無謀にも、少し期待した。
口下手で不器用な彼が褒め言葉を口に出すなど、天地がひっくり返ってもあり得ない。
いつもならそう考えることが出来たのに、もしかしたらと思ってしまうほどには、私も浮かれていたのかもしれない。
いざ会場に着いてみると男性陣は既に到着していたようで、私たちを見つけては口々に褒めそやしてくれた。
驚いたことにガジルまでも顔を真っ赤にしてレビィにぼそりと何かを呟いたことだ。
私の耳にはしっかりと聞こえたが、彼のために聞こえないフリをすることにした。
もっとも、レビィの表情から何を言われたのかなど明白だったのだか。
そんな初々しい2人を尻目に、いつも通り不遜な態度を崩さずに私の前に立ち塞がった彼。
もちろん、口を開いたのは私から。
「どう?みんなが見立ててくれたの。」
「…行くぞ。」
そのままくるりと身を翻した彼に怒りを覚えた私は悪くないはずだ。
言葉数が多い人は嫌いだが、こんな日くらい私の欲しい言葉をくれてもいいのに。