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フェアリーテイル 【雷竜と漆黒】 完結

第12章 【番外編】 精一杯の賛辞を


 ルーシィの小説が受賞したお祝いの式典に招待された。まさかルーシィが小説を書いているなんて知らなかった。それも妖精の尻尾での冒険の記録を元にして。

 彼女曰く、私とラクサスの話もモデルになっているそうで、もちろん小説を購入して読んだ私は赤面した。

 何を書いてあったかは誰にも(もちろんラクサスにも)言わないが。因みにラクサスは読む気が無いようで、実は読書が苦手な彼らしいと思った。

 そして今は式典に出るための正装を探しに来ている。ミラを始めとした妖精の尻尾の女性陣と一緒ということもあって、ブティック内はやや騒がしい。一人で選ぶよりも他人に選んでもらった方が良いのは確かなので、有難いのだけど。

「クレアさんは、どんなのを選ぶんですか?」

 恐る恐るといった風に声を駆けてきたのは最年少のウェンディ。彼女のドレスの相談役は専らシャルルだったのだろう、その手には既にドレスが握られていた。

「うーん、派手じゃなければどれでもいいかなって。」
「そんな!勿体ないです。クレアさんは、その綺麗な方なのに…。」
「フフッ!嬉しいわ!じゃあ、ウェンディも一緒に選んでくれる?」
「勿論です!あ、私で良ければ、ですけど。」

 彼女は妖精の尻尾には珍しく、大人しい子だが、誰にも負けない芯の強さを持っていると思う。それは彼女がぶつかって来た困難の数だけ強くなって、今の彼女を形作っている。

 それでも妹のように可愛がっているウェンディの頭にぽんと手を置いて、ドレス選びをお願いすると快く受けてくれた。

 いつの間にかブティックにいた女性陣はみんな私のドレスや小物、更には当日の髪型やメイクの計画までもし始めた。どうやら当日の服装に拘りが無く、最後まで何も決めていなかったのは私だけになっていたようだった。

 私のドレスは結局黒をベースとした布地にスカート部分に黄色で複雑な模様が織り込まれたものになった。シンプルなスレンダーラインのドレスでありながら、ワンショルダーでかつスカートの黄色い模様が光を受けて煌めくので、シンプル過ぎない。

 黄色を入れたいと思っていながら恥ずかしくて言い出せなかった私の気持ちを、ミラが察して率先して選んでくれたものだった。

 こっそり彼女に礼を伝えるといいのよ、と大輪の薔薇を思わせる笑顔を向けてくれた。


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