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フェアリーテイル 【雷竜と漆黒】 完結

第11章 最終決戦


 マスターが目覚めて間もなく、私は抗えない力によって<どこか>へ引きずり込まれた。周りを見渡すと魔結晶に囚われたラクサスと…

「滅竜、魔導士…?…あっ!」

 足元から発生した魔結晶は私を取り込んでいく。

「水竜の砲撃!」

 掌から発生させた高圧水流の塊はあっけなく散った。その間にも魔結晶は腰上にまで到達し、どんどん侵食してくる。遂に首元まで来た。

―ナツ。お願い…。

 もう目を開けていられない。私は完全に清んだ結晶に閉じ込められてしまった。体に力が入らない。魔結晶の外から僅かに感じる気配はアクノロギアとナツだ。ナツが必死に戦ってくれているのに。




―私がここで、何もできずに居ていいわけがない。

 みしり、と魔結晶にヒビが入る。すかさず全身の筋肉を総動員してなんとか脱出を試みる。
 硬質なモノが砕ける音がしてようやく体が自由になった。魔結晶の欠片が光を反射してキラキラと光り、その向こうにやはり同じように魔結晶を砕いたのであろう、滅竜魔導士達が見えた。
 彼らの眼を見て確信する。彼も、私と同じ考えのようだ。

「ナツ!!」

 どうか、魔力に託した私たちの想いを。

 炎竜王の子は、竜王に打ち勝った。

 あの人は、アクノロギアは、かつてドラゴンに幸せを奪われた被害者だった。消えゆく彼が、どうか来世では幸せを手放すことが無いように。私は黙したままそっと心中で祈る。


 ナツの勝利に安堵したのも束の間のことでパキ、と足元から音がした。

「うわっ!」

 足元にヒビが入ったかと思った瞬間一気に砕け散った床に対応する間もなく体は宙に浮いて重力に逆らうことなく落ちていく。

「きゃあー!…うっ!」

 長い闘いが終わったと思って完全に気を抜いていた私は何とも間抜けな叫び声を発して落下した。そして必ず最後にやって来るであろう衝撃に目を閉じていたが、思いの他柔らかいものに正面から受け止められた。

「…痛ぇ。」
「うん?あっ!ごめん、ラクサス!!」

 胸の下から響いたくぐもった低音にはっとした。あろうことか彼の顔面目掛けて落下したらしい。彼の顔の横に両手をついて慌てて起き上がろうとするが、いつの間にか腰に回っていた手がその動きを途中で止めた。



 





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