第10章 集う
ベリオロスに跨ったと同時に彼は大きく後方に飛びあがり、空中でホバリングする。その瞬間を見計らって螺旋状の水柱を出現させた。
「ベリオロス!ブレスを!」
ベリオロスが放つブレスによって一瞬にして氷となった水の柱は、その後に残された竜巻の凄まじい風圧によって放射状に飛び散る。そして砕かれた氷の破片は鋭利な刃物となって敵を襲う。
そうして雪山での戦闘は数時間にも及んだ。
「ベリオロス、ありがとう。ゆっくり休んでね。」
純白だったベリオロスの体毛が血と泥で汚れてきた頃、やっとあらかたの兵を鎮圧できた。ベリオロスが光となって散ったのを確認して重い体を引きずってみんなの元を目指す。
―ガジルの魔力が消えたわ。それに、この巨大な魔力…。早くみんなと合流しないと。
まだ先では無数の魔力の衝突を感じる。私がこうしている間にも、味方が、家族が傷ついているのだ。
「なに…これ!?」
突如空から光が広がる。光は瞬く間に広がり、私たちの全てを飲み込んでいった。
「ここは…。」
見たことのない場所だ。しかも状況は良くない。敵はいないが、味方も見当たらない。完全に孤立してしまったようだ。
「世界改変魔法…!?こんな高度な付加魔法を操るものが居るなんて。」
霊峰ゾニアで感じた巨大な魔力の持ち主だろうか。いずれにせよ、どうしてこんな魔法を使ったのだろうか。帝国の、いや、ゼレフの目的は初代…
そこまで考えて、はっとした。
「まさか。ゼレフと初代を…!」
十分にあり得る話だ。私や他の者たちの場所がランダムに配置される代わりに、目標の人物や物を近づけることが可能であるとしたら…。
「初代を守れる人が居なくなる!」
その時、頭に声が響いた。
『ギルドは――の方角に。』
「え?」
『メイビスを守って!!』
初めて聞くはずの声に何故か酷く懐かしさを感じた。この声に従うべきだと、心がそう言う。
いずれにせよ、初代の元に向かう必要がある。敵の魔法によってランダムに配置されてしまった以上、このフィオーレ王国の面積や地理ですら変わってしまった可能性が高い。今はこの声に頼ることが最善だろう。