• テキストサイズ

フェアリーテイル 【雷竜と漆黒】 完結

第10章 集う


 聞こえてきた声の方向に向かって歩き出すとその先にはあちこちに傷を負ったラクサスが居た。

「ラクサス!」
「クレア…。」
「貴方も声の言う方に?」
「ああ。お前、随分やられてんじゃねぇか。」
「貴方こそ…って待って!」
「あぁ?」
「貴方その身体!!また無茶したのね!!」
「ぎゃあぎゃあ喚くな…。」
 
 始まったとばかりに顔をしかめる彼。でも、それどころではない。また魔障粒子を吸い込んだのだろう、彼の息は苦しそうだ。しかもその身体でまだ戦闘を続けていたらしい。

「何ですって!?何でいつも自分を犠牲にするのよ!」
「そういうお前も、魔障粒子を吸ったんじゃねぇのか。」
「私は浄化できるじゃない!」
「俺にもお前が居るだろ。」
「なっ…!…はぁ。じゃあとっとと座ってじっとしてて。」

 まるで当然のことのように言ってのける彼に反論する体力などもうない。
 私の修業の成果なのか彼の身体の丈夫さが幸いしたのか、浄化はすぐに済んだ。

「ハイ、終わったわ。」

 彼の静脈に流していた水管を引き抜く。向かい合わせに座っていたため正面から彼の顔を見上げることになっているが、彼は私の顔をじっと見つめたままだ。

「何かついてる?」
「誰にやられた。」
「えぇ?魔障粒子のこと?」
「いや、違う。泣いてたろ。」

 そっと私の頬に無骨な掌を当てて硬い指がとうに枯れたはずの涙の跡を辿る。泣いていたことを見破られるなんて、私もまだまだだわ。観念して口を開く。

「あの子に、レティに…逢ったの。」
「…!?敵の妙な魔法か。」
「多分ね。」
「そうか。」
「ラクサス。」
「なんだ。」
「生きてって、そう言われたわ。」
「当たり前だ。」

 彼の不器用な優しさが好きだ。私が多くを語らずとも黙って側に居てくれる。そして私の紡ぐ言葉を、丁寧に拾って返してくれるのだ。言葉数の少ない彼だからこそ、1つ1つの言葉は重く、意味を持つ。

「クレア、お前には家族が付いてる。」
「うん。」
「妹も、一緒にだ。」
「そうね…。」
「離すんじゃねェぞ。」
「離れたいって言ったって離してやるもんですか。もちろん、貴方もね。」

 私が揶揄いを含んだ目線を投げかけると、彼は少し瞠目して言うじゃねェか、と笑った。




 
/ 70ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp