第7章 再び
瞬間、ラクサスの雷が砂の壁を霧散させた。目を見開いてこちらに視線を寄越すマスターはやはり、変わらない暖かさを持っていた。
「老けたな、じじい。」
マスターを見る眼は誰よりも優しいのに、素直じゃない人。
その隙にメストが瞬間移動を発動させる。
「逃がすかァ!!」
アルバレス帝国の将軍の一人と思われる人が吠える。再び砂が形を持ち始めた。
「逃げる?家に帰るだけさ。夕食に遅れちまう。」
凄まじいまでの電気量を誇る攻撃によって砂を操る将軍は私たちを追撃することは叶わなかった。
メストの瞬間移動で天馬の飛行艇に降り立ったみんなは、一目見ただけでも大きく成長を遂げていることが分かった。喧しさは変わらず健在だけど。
ラクサスは早速ナツ絡まれてるし。エルフマンは漢だなんだって暑苦しい、レビィもガジルといちゃついてる。それでも、いや、そんなみんなを見たからこそ、マスターの目からは絶えず涙が流れてる。
「最高の家族じゃ、妖精の尻尾!!」
ギルドに帰ってからは想像通り、お祭り騒ぎだった。全員が無事に家に帰ってきたことで言いようもない心地よさを感じた。
でも、まだ終わったわけじゃない。この場所を守り抜くために戦うのだ。
そこに初代が現れてギルドの最高機密を知った。想像を絶する初代と妖精の尻尾の過去、呪われた少女と少年の一なる魔法の物語。
静かに涙を流す初代を見て私は無意識にラクサスのコートの裾を握りしめていたようで、彼は何も言わずそっと頭に手を乗せてくれた。
彼女はゼレフを愛していたのは遠い過去のことだと言うけれど、私は彼女の決意に隠された僅かな祈りを見た気がした。
―彼を救いたい、彼と共に生きたいと。
でも今は、そんなことを言っている場合じゃないことはわかってる。ゼレフは全軍を率いて攻め入ってくるのだと言う。
「敵の主戦力は12人の魔導士、」
マスターが知り得る限りの情報を話す。一国に対して戦争を仕掛けることがどんなに非現実的なことかを突き付けられた。それでも―
私は、二度とこの場所を喪いたくない。そのためならば、なんだってやってやる。