第2章 過去の断片
テンペスターがやられたらしい。標的の元評議員は確か、ヤジマと言ったか。更に問題なのは奴が魔障粒子を街中にばら撒いたことだ。何の関係もない人達を巻き込むだなんて。一言言ってやろうと再生ラボに向かう。
「ヒュル…クレアか?何の用だ。」
得体の知れない液体に浸かったままのテンペスターが問う。
「何の用ですって?自分が何をしたか分かってるの?テンペスター。」
「魔障粒子のことか。あれのおかげで敵の駒を減らせた。」
「罪のない人達まで巻き込まないと倒せなかったのかしら?」
「口に気をつけろ。悪魔でもない貴様がこのギルドにいられるのは誰のおかげだ。」
「自分の能力よ。覚えておきなさい、次、無差別に人を殺したらモンスターの餌にしてやるから。」
言いたいことを言ってすぐにその場から立ち去る。これ以上この不気味な空間にいたくなかった。私が人間でありながらこのギルドに所属できているのはこの能力のおかげだ。私の能力は異世界のモンスターを召喚するものだ。どういった原理なのかわからないが、この能力は魔法じゃない。つまり、魔力を一切消費しないのだ。彼らの計画にとって私の能力は非常に興味深い研究対象であるわけだ。まぁ、私にはこれ以外にも彼らに与する理由があるのだけれど。
旧知の仲であった人を敵に回すということはかなり精神を消耗する。たとえ覚悟ができていたとしても。自分の部屋に辿り着くと私はソファーにもたれかかり、目を閉じる。また何らかの指示が来るだろう。それまでに少しでも休みたかった。いや、かつての[家族]の敵として向き合うためにはもう少し時間が欲しかった。