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フェアリーテイル 【雷竜と漆黒】 完結

第6章 雪山に轟く


 この呪力をどうすれば…
 ひとまず気絶したウバリさんは家の寝室に寝かせて、悪魔の書は外に運んだ。もちろん水で。そこでいろんな方法を試そうという訳だ。
 
 生憎、聖属性のモンスターなどいないし、滅竜魔法で浄化ができるかもわからない。それでもやってみるしかない。開いた悪魔の書は黒い靄に包まれていて、その靄が伸びて今にも家の中にいるウバリさんを取り込みそうだ。

 ウバリさんは気を失ってもなお、自責の念に苛まれているらしい。

「水竜の浄戒」

 ごっそり魔力を奪われるのを感じる。

「クレア、やめとけ。無駄だ。」
「はぁっ…はぁっ…どうしよう。このままじゃ、」
「燃やせ。」
「え?」
「元は本だろ。燃やしちまえばいい。」
「いつからナツみたいな思考回路になったの?」
「道理にゃ合ってるだろ。」
「…やってみるわ。」

 悪魔の書に効果のある炎…ただ燃やす炎じゃなく、全てを破壊するほどの炎じゃないといけない。あの子がいる。

「テオ・テスカトル!」

 地鳴りと共に巨大な獅子のようなモンスターが現れる。豊かな鬣を靡かせて静かにこちらを睥睨する。

「なんだよ、そいつ。」
「ラクサスは初めましてよね。テオ・テスカトルよ。」
「さっき聞いたし、そういうことじゃねぇ…まぁいい。で、そいつなら燃やせるんだな?」
「この子の炎は裁きの炎。悪魔にふさわしい判決を下すわ。テオ、お願い。」

 鼻筋に皺を寄せて悪魔の書を凝視していたテオは四肢を地面にしっかりと縫い付けた。そしてぐっと胸を張り、深く息を吸う。

「耳塞いでて。」
「おう。」

 ラクサスもテオが吠えようとしていることが分かったらしく、即座に両手を耳に持っていく。その瞬間―

 脚がすくむような咆哮が感覚を支配した。ビリビリと大気が震え、遠くの森で鳥が飛び立つ。

 そして悪魔の書を起点にいくつもの爆発が起こり、テオの咆哮が余韻を漂わせる頃には灰も残らなかった。

「やったわ!!さすがテオ!」
「バケモンだなこりゃ。」

 私が喜んでいる様子を見てテオは誇らしげに胸を張る。そしてゆっくりと歩を進め、私の身体にその大きな鼻を摺り寄せる。私が手を差し出すとテオのざらりとした舌が私の手を舐め回す。

「ありがとう、テオ。」

 ひとしきり私に甘えて満足したのか、テオは帰っていった。
 
 




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