第6章 雪山に轟く
「…またか。」
「多いわね。」
街を出てから1時間もしない内に3度も魔物の群れに遭遇している。どの群れも異常に興奮していて統率が取れていないようだ。
ざっと見たところ今回の群れは20体。
「キリン。」
私のすぐ横の空気が動く。魔物の群れに雷のような速さで突進していく。その衝撃で数匹が吹き飛ぶがキリンは首を大きく振って嘶くと更に周囲に放電した。
これで魔物は一掃されたようだ。
碧色を帯びた美しい鬣の放電が終わるとそっと近寄ってきて肩に大きな頭を摺り寄せてくる。撫でろということらしい。
「ありがとう、キリン。助かったわ。」
美しく靡く硬い鬣に手を突っ込んで少し強めに掻いてやるとまだ少し電気が残っていたようで手がピリピリした。
「えげつないな、そいつ。」
「貴方も似たようなものじゃない。」
「あ?」
「クスッ、何でもないわ。」
実際違うのはその色くらいで測り知れない強さや意外に甘えん坊なところは非常に似ているのだけれど。あと少し硬い髪質も。
「面倒な戦闘が多かったけれど、色々分かったこともあるわ。」
「なんだ。」
「魔物たちは自分の意志では動いていない。」
キリンが発する蒼い雷は天然の落雷をも優に凌ぐ電気量を誇る。自然界にいる生物は正気ならば本能的に雷を避けるはずなのに、キリンの雷を纏った突進を見た後も躊躇なく飛びかかってきた。
「魔物の意思を操ってる黒幕がいるかもしれねぇってわけか。」
「そうね。どの程度操れるかは定かじゃないけど、用心するに越したことはないわ。」
「ああ。」