第6章 雪山に轟く
もう決めてあったらしく、私の前に依頼書を差し出す。依頼書には[雪山の麓にあるブルム集落からのSOS]と書かれている。詳細部分は空白、依頼主はブルム集落の長、報酬は470万J。以上だ。
「これだけの情報量でよく依頼として成り立ってるわね。怪しすぎない?」
「俺がよく修業で行く近場だ。そこの集落の長とも何度か面識がある。」
「あら、私たちに隠れてそんなことしてたの?」
「お前も人の事言えねぇだろうが。」
「まぁね。」
そう。私も密かに修業に明け暮れていた。なにぶん〈魔力〉を使っていなかった期間が長かったもので、魔法の制御がうまくいかないやら魔力がすぐ切れるやら…とにかく実践で使えるまでに調整している途中だった。それも最近になってその調整もうまくいき始めたのでさらにモンスター達と共闘できるように修業しなおしていたのだ。
ラクサスが修業に使う山なのだからきっと強い魔物が大量にいるのだろう。でもこの雪山に行くまでの交通手段はどうするんだろう?
「ねぇ、どうやって行くつもりなの?」
受付のカウンターに向かいながら聞く。
「汽車と徒歩だ。」
「大丈夫なの?」
「仕方ねぇだろうが。他のヤツらは居ねぇし、いいだろ。」
確かに目的の集落の最寄り駅まではここから汽車で4時間ほどかかる。徒歩で行くことなど考えたくもない。かと言ってモンスターで飛んでいくのも現実的ではない。なぜなら彼らが私以外を背中に乗せたがらないからだ。困ったことに。
「頼む。」
「はい。お二人ですね。少々お待ちください。
はい、受理いたしました。気を付けて行ってらっしゃいませ。」