第5章 もう一波乱?
体中が痛くて目が覚めた。今日はエバと仕事に行くって言ってるのに。当然のことながら私の静止など意味を成さず、彼が満足するまで付き合う羽目になった。
「どんだけ体力バカなわけ。」
眠っていても眉間に皺は寄ったままの彼を睨む。そっと彼の髪の毛に手を這わせて撫でる。髪の毛は見た目通り固くてチクチクした。フ、と自分の表情が緩むのが分かる。
「…何してんだ。」
寝起きの彼の声は一段と低くて少し掠れている。寝ていたはずなのに声を発したことに驚いて一瞬だけ体を強張らせるが、すぐに平然を装う。
「別に?って言うか今日エバと仕事なんだけど。」
「そうか。」
「そうか、じゃないわよ。動けないじゃない。」
「昨日あんなにヨガってたらそうなるわな。」
「犯罪者顔。」
「あ”ぁ?」
「ギルド行く。」
「まだ10時だぞ。」
「もう、10時よ。エバとの約束は11時なの。…離してくれない?」
がっちり腰をホールドされてる。これ昨日もあった気がするわ…背中に頭を押し付けてくるものだからこそばゆい。今日はヤケに甘えただ。
「どうしたの?やけにくっついてくるじゃない。」
「エバには昨日言っといた。多分仕事行けなくなるってな。」
「どんだけ勝手なの。」
この人の用意周到さに若干呆れる。本当にどうしたのだろう。いつもの彼ならこんなに甘えてこないし、仕事だと言えば渋々ながらも放してくれたのに。
「ねぇ、ラクサス本当にどうしたの?」
「……くな。」