第4章 平穏?
「ラ、ラクサス…」
ラクサスの周りがバチバチと放電してる。
「何してんだって聞いてんだよ。」
「いや、ボクは」
「よ、酔ってたのよね、ヒビキは!」
どうして彼がこんなにキレているかはわからないが、とにかく放電を止めないとやばそうだということはわかる。
「ほぉ?それで?」
「ハハハ。頭も痛いし、家に帰って寝ようかな。悪かったね、クレア。」
そう言ってしっかりした足取りでさっさと退散するヒビキ。ほんとに酔ってたの、あれ。
「助けてくれてありがとう。じゃあ、うわっ!」
じゃあね、と続けようとしたけど無理だった。視界が逆さまだし、お腹に圧迫感がある。私はラクサスの腕に担がれていた。
「ちょっと!なんなの?」
「…。」
ラクサスはそのまま無言で私を担いで一瞬で家に飛んだ。あ、これ本人以外でも痛くないんだ。なんて呑気なことを考えているとドサッとソファーに投げられた。
「痛いんだけど。」
「本気で俺と別れるつもりか?」
「もうこの話は終わったじゃない。貴方だってミラと「ミラの話はどうでもいい。」…え?」
「何を勘違いしてんだか知らねぇが、俺はミラと付き合ってもねぇしあいつのことをそんな目で見たこともねぇ。」
「うそ。私が勝手に出て行ったからミラと付き合えなかったんじゃないの?」
「なんでそうなるんだよ。」
「だって貴方前からミラと仲良かったし、私が帰ってきてからずっと私とまともに話してくれなかったし。」
「ミラはただの仲間だ。お前こそもう俺に気が無いんじゃねぇかって思ってた。」
「そんなわけないわ。冥府の門にいた時もずっと…貴方こそ私のことはもういいのかと思ってた。」
「その言葉そっくりお前に返してやる…って何泣いてやがる。」
冥府の門から解放されてからずっと心につかえていたものが無くなったことで私の涙腺はまた限界を迎えたみたいだ。こんなに彼が好きだったなんて、自分でも思わなかった。私の泣き顔でいつもは冷静な彼が心なしかうろたえている姿まで愛しいと思うなんて、私も末期かもしれない。
「ごめんね、勝手なことばっかりして。」
「全くだ。もう勝手にいなくなるな。絶対に。」
「うん。」
早く泣き止め、なんて言いながら私の頭を抱き寄せてくれるんだから本当に参ってしまう。私の涙がなかなか止まらない理由は久しぶりに感じる彼の温もりだと言うのに。
