第4章 平穏?
…気まずい。この人は何を考えてるのかしら。
乗り物がダメなラクサスに合わせて私も徒歩で目的の集落に行くことにした。歩いて2日ほどの道のりだそうだ。途中には宿や村もあり、比較的快適な旅路になるはずだった。2時間前にギルドを出発してから何の会話もない。
いっそのことモンスターでも呼び出してみようかと私が思いかけていた時だった。
「クレア。」
「っわ!なに?」
考えごとに夢中になっていたせいで彼がこっちを向いていることに気づいていなかったようだ。
「お前と俺のことなんだがな、「待って!」」
「まず謝らせて。何も言わないで勝手に置いて行ってごめんなさい。」
「いや、それは…」
「後ね、ずっと言いたかったんだけど、貴方がミラと付き合ってるとしても私は大丈夫よ。」
「…は?」
「もういいの。ずっと貴方を縛り続けてしまった。貴方はもう好きな人と結ばれてもいいわ。」
「何言ってやがる。」
バチッとラクサスの周りでスパークの音がする。いったい何なの?
「俺はお前と別れたつもりなんてねぇぞ。」
「だからもう別れましょうって言ってるのよ。」
「…そうかよ。勝手にしろ。」
そう言ってさっさと歩いて行ってしまう。
「ちょっと!何怒ってるのよ?」
「この依頼は俺一人でやる。帰れ。」
「え!?ちょっ!」
雷が光ったと思ったらそこにもう彼の姿はなかった。そう。そんなに私といるのが嫌なわけね。だったら依頼を2人で受けるなんて言わなきゃよかったのに。彼はもう自由に好きな人と結ばれる。これでいい。
はずなのに。私は全然、彼のことが吹っ切れてないみたい。別れた事実よりも彼に嫌われたのかもしれないことが何より苦しかった。
別れた後も友人でいて欲しいなんて、甘い考えだったのだろうか。