第5章 competition
気がつくと私はなぜか、
及川さんより龍ちゃんを心の中で応援していた。
及川さんがダーツを放っている時、
龍ちゃんが私に近づいてきて、耳元でコソッと言った。
「安心して。ちゃあんと負けてあげるから…」
「……え…」
龍ちゃんはフッと笑って何事も無かったかのように離れていった。
最初から最後までとても接戦で、
そして最後の最後、龍ちゃんが放った矢はズレて、及川さんが勝利した。
龍ちゃんの宣言通りだった。
女の子は「もぉ〜なにやってんのよ〜」と落胆していて、
私は「さすが及川さん」と言って拍手を送った。
「いい勝負だったよ、付き合ってくれてありがとう」
「こちらこそありがとうございました。やはり敵いませんでしたよ〜凄いですね!」
2人は朗らかな笑みで握手を交わしている。
その後に、及川さんがコソッと何かを龍ちゃんの耳元で言っているのが見えた。
龍ちゃんはニコニコしているだけだった。