第5章 competition
向こうを盗み見ると、
及川さんが私にするみたいに、龍ちゃんが女の子に触れながらレクチャーしている。
わざと耳元に口を寄せて甘く囁いているのだろう。
一見すると、とても中睦ましいカップルにも見えるが、女の子のほうは完全に目がハートで、彼氏に向けるそれというより溺愛している男に向けるそれといった感じ。
けれど龍ちゃんのその笑顔の裏には、
心底面倒くさがっているウンザリ気味の顔があることが私にはわかって、内心それが面白くて笑いをこらえた。
「なぁに、レオナちゃん。
向こうが気になるの?」
!…しまった。
少し見すぎたかも…?
「ううん?そうじゃなくて、」
そのとき、龍ちゃんに突然話しかけられた。
「すみませーん。レオナさん。
この子と写真撮ってやってくれませんかー?」
「っ?!」
見ると、照れたように小さく、
「お願いしますっ」と言っている女の子が隣にいて、その子の頭に優しく手を置いて笑顔を浮かべている龍ちゃんがいる。