第5章 competition
「まぁ、ホストはあれかもだけど、
お客さんならよくない?そういうキャバ嬢いっぱいいるじゃん。みんな金持ちと結婚して、幸せになってるみたいよ?」
「私の同僚とか昔の仲間でもお客さんと結婚して水揚げされた子たちはいるけど、幸せ云々ってより、単純にお客さんをそういう目で見れないの」
「あ〜やっぱ?わかるわぁ。俺も。」
私は22歳からキャバ嬢をやっている。
龍ちゃんは23歳からホストをやっている。
私はわりと良いとこの大学行って、ちゃんと卒業もしたけれど、普通の仕事に就くのがとにかく嫌だった。
毎朝大学に通うまでの電車の中で、疲弊憔悴しきっているような表情の社会人たちを見ていて、絶対にこうはなりたくないと思った。
こんなに生気が抜けて、死にそうになってて、もしくは本当に死んでしまう人だっているのに、それでもこんなになってまで同じ時間に会社に行って、同じ作業をして、同じ時刻に帰るみたいな、いわゆる社畜という生活だけはしたくないと心の底から思っていた。
しかも、給料だって全然労働に見合わないらしいし。
そんなの、死んでも嫌だ。