第4章 Jewel
「ねえ、レオナのバースデーにまた行ってもいい?」
「っは?!なんで?!」
「なんでって言われても。行きたいし、あいつらも行きたがってたし。」
「でも…龍ちゃんは私の客じゃないし…
私にお金遣わせるのってなんか嫌なんだよ」
こういうことをしていたら、
なんだか本当にだんだん関係が崩れていきそうで…
「別に俺、金ならいくらでもあるし、
いつもレオナにお世話になってるお礼だよ。
あと単純に、その日のレオナと店内を見たい!
きっと街中からしてすっごいことになってるんだろうなぁ」
本気で目を輝かせて言っているが、
それはあなたも同じだろうと思った。
「わかったよ、私も龍ちゃんのバースデー行くね。
単純にその日のあなたと店内を見たいから」
こういうことをしていけば、もう周囲に私たちが仲良いことはバレバレになるわけだが、もう投げやりになっている。
別に他店のNo1同士に親交があることなんておかしなことでもないし。
ただ、こういう関係だということがバレなければいいだけ。
水商売は、極力プライベートを隠すことが重要だ。
「私も普段から龍ちゃんにはお世話になってるからね…」
私にお世話になってるなんて言ってくれて、内心嬉しい。
お互いがお互いの仕事の支えになっているのは確かだ。
妙な関係だが、心の奥底で、私は龍也を必要としていると最近気がついた。
ずっと一人で生きてきたのにだ。
恋人だって友達だって、別に要らなかった。
単純に、プライベートで他人のことを考える余裕がないからだ。
つまり、鬱陶しいから。
それなのに、この龍也という男は私にとって、いつの間にかきっと「良い友達」になっているんだろう。
友達…と呼ぶのが相応しい関係かは分からないけど、いまの私たちにはその単語しか見つからない。