第4章 Jewel
「あっ…」
龍ちゃんがスマホを見つめている。
「今日連絡先交換した女の子から、デートのお誘い来たよ」
「えっ!誰?」
「アズサちゃんて子。えっとぉ…あのショートヘアの子か。確かまだ若いよね」
「うん、まだ大学生だよ。
てかどうするの?デートしてあげるの?」
「……どうしたらいい?」
「は?なんで私に聞くのよ」
「だってレオナの後輩じゃん!」
「そんなの関係ない。行きたきゃ行けばいいでしょ?私はいくら同じ店の子でもプライベートのことにまでいちいち関わらないよ」
龍ちゃんは、うーん…と唸っている。
何を悩んでいるのか知らないが、若くて可愛い子だし、性格も良いから、この人に迷惑がかかるようなことはないと思った。
「プライベートってか…俺にとっては仕事になるんだけど?」
「………え。もしかして店に連れてく気?」
「はぁ~、当たり前だろ~。何言ってんの」
呆れたようにそう言われ、私は少しイラついた。
「なら、ダメ。ホストになんかハマらせたくないから。」
「ほらね?そう言うと思ったからレオナに許可とったんだよ。じゃー…同伴してくれるならいいよっと…」
と言いながら文字を打ち始めた。
それを横目で見ながら眉を顰める。
そう返信すれば、アズサちゃんはしっかり者だから断るはず…。そう期待する。
すると、すぐに返信が来たらしく、龍ちゃんはニカッと笑いながら画面を見せつけてきた。
「是非!だって!!」
「っ…!!」
アズサちゃん…そんなに龍也と会いたいんだ…。
「やった☆新規のお客様GETしちゃった~」
「はぁ…まぁ私が彼女のプライベートに口出せないしなぁ…。でもあんまりハマらせないであげてよ。付き合う気がないのなら。」
「んー…そんなこと言われてもなぁ」
「まぁ…そうだよね」
他人の感情なんてコントロールできっこない。
こうしてまた1人、また1人と、この男にハマる女が増えていくんだろう。
「でも、初めは客でも、だんだん恋愛対象になることもあるんじゃない?」
「絶対にない」
龍也は全く間をあけずにキッパリとそう言いながら返信を書いていた。