第4章 Jewel
「つれないなぁ、レオナちゃん、
今日は付き合ってくれないのぉ?」
「こら、野村、レオナちゃんも忙しいんだぞ」
とある私の客の連れ(かなり若い)は、よく連れられて来るのだが、今日のアフターには付き合ってくれないことに頬を膨らめている。
少々酔っているようだ。
しかし私のメインの客たちはアフターを無理強いする人は一人もいない。
自分で言うのもなんだけど、良い嬢には良い客がつくものだ。
「じゃあね、レオナちゃん。
また来るから。お仕事頑張って」
「はい!今日はあまりおもてなしできずすみませんでした。次回は是非同伴したいです。」
「ふふっ、いつも充分おもてなしされているよ。気にしないでくれ。」
そう言って私にアーモンドチョコの菓子箱を押し付けてきた。
「糖分は必要だろう?…じゃ!」
ニヤリと笑ってタクシーに乗り込んで行った。
私はタクシーが見えなくなるまで笑顔で手を振り、周りの嬢やボーイたちはずっと頭を下げている。
「…アーモンドチョコ…ね…開封済みの。」
この中には万札がギッシリ入っているであろうことは想定済みだ。
私はおもむろにバッグにそれを入れ、全ての客を同じように見送った。