第3章 promise
「今、レオナは仕事のことを考えてたでしょ。
店のことはどうしようか、従業員のこと、後輩のこと、客のこと…まぁつまりはさ、全てのことを捨て去る覚悟はまだまだ持てないってことさ」
私はゆっくりと龍也の方を見た。
彼は切なげに目を細めて私を見つめている。
「ここまで積み重ねてきたものを一瞬で手放すなんてできないよな。No.1の座を譲ることだってプライドが邪魔をする、当然だ。
…でもそれは俺も同じだよ。」
「……そう…だと思う…」
まんまと全てを言い当てられた。
私は目を逸らさずにジッと彼を見つめた。
彼もまた、目を逸らさない。
カラコンをしていないその真っ直ぐな肉眼は、全てを見透かしているように見えて、私は眉をひそめた。
「ねぇ… レオナは…
あとどのくらい、この世界で頑張れそう?」
「……わかんない。そっちは?」
「…俺もわかんない。でもいつも思うよ。
楽になりたい…ってね…。」
静かにそう言うと、タバコを取り出してテーブルの上のガラスの灰皿を引き寄せた。
これは来客用ではなかったのか、
というより、この人はタバコを吸うのか、と初めて知った。