第3章 promise
龍也はなぜか、どうしたのとか何があったのとか聞いてこない。
聞かない方がいいと思っているのか、
私から話すのを待っているのか、
たいして気にもしてないのか、
はたまたどうでもいいのか、
けれど、正直言って、私は別に何かあったわけじゃなかった。
ただなんとなく。
何もかもに疲れて。
なんのために毎日ドレスを着て、化粧をして、ヘアセットをして、同伴して、愛想振りまいて、機嫌とって、機嫌とられて、アフターして、
昼間は寝て起きてすぐ何百件の連絡を返して、
四六時中営業して…
……なんのために。誰のために。
そう。多分私は…
ものすごく疲れていて…
自分の自尊心やプライドを守ることに費やす毎日に、
1分1分に…1秒1秒に…
ただただ疲れていて…
誰かにわかってほしくて、
でもこんな私のことをわかってくれる人なんかいるわけなくて…
唯一頭に浮かんだのが、
あなただった。
ただ、それだけ。
電話口で何も喋らなかったのに、
あなたはすぐに来てくれた。
すごく優しいんだなと…そう…思った。