第11章 hesitation ■
「俺は、レオナとこれからも一緒にいたいよ」
その言葉に目を見張る。
「…は?だって…今さっき…」
「セフレ…みたいな関係にはなりたくないって意味だ」
私が何も言えずに押し黙っていると、
龍也も起き上がって私の手を握った。
気まずそうな顔をしてその手に視線を落とし始めた。
「レオナの体…求めておいてこんな…
こんな勝手なこと今更言うの、ホントおかしいと思う。
おかしいと思うけどでも…やっぱり俺は…」
そこまで言ってからゆっくりと顔を上げた。
その表情にハッとする。
あまりにも真剣な眼光になっていたからだ。
「レオナが好きだ。」
その言葉に、心臓が跳ねたのがわかった。
「だから…セフレみたいなこんな関係じゃなくて…
できればちゃんと…っ…付き合いたい…」
ホストとしての彼からの発言ならば、
こんなの嘘に決まってるだろう。
おそらく今まで、こんな口説き文句という名の営業トークを簡単に吐いてきただろう。
信用なんてするわけがない。
でも…目の前にあるこの顔は、
明らかにホストとしての龍也ではなく、
一人の男としての隼人だった。
「本当は…頑張って仕事してるレオナに対して、こんなこと言っちゃダメなんだ。分かってる。
…でもさ…でも… レオナとだけは、こんなだらしの無い関係嫌なんだ。レオナにだけは…ホストみたいなこと絶対にしたくない。」
握られてる手の力が強まっていく。
「だってレオナだけは、俺を隼人として接してくれてる。受け入れてくれてるから…。」
美しい瞳がまっすぐと私を射抜いている。
長く整ったまつ毛がゆっくりと瞬きされた。
「単純に…好きで…大切なんだ。
そばに居てほしいんだ。望月真珠に。」
視界がどんどん歪んでいく。
龍也の真剣な顔がたちまち見えなくなる。
私は目を見開いたまま、
なぜか無意識に涙が溢れてきていた。