第11章 hesitation ■
「私が、上書きするよ、龍ちゃん」
話を聞き終わったレオナはそう言って、
俺の体を抱き締めた。
「苦しい思い出、全部俺が上書きするって言ってくれたじゃん。それで本当に上書きしてくれた。
だから私だって、当たり前にそうするよ。」
静かに紡ぐその言葉に、
俺は不覚にも目頭が熱くなってしまった。
「……龍也はさ…ホストの前に、1人の男なんだから。月島隼人っていう、一人の普通の人間だよ。」
「…うん。ありがとう。
望月真珠ちゃん。」
いつか、この名前を普通に呼びあえる日が来るんだろうか。
胸を張って、
普通の、ただの、1人の人間として。
生きていける日が…。