第11章 hesitation ■
葵さんがバタリと気を失った。
さっきまで俺の話を真剣に聞いてくれていた
そんな、いつでも優しい彼女が。
俺は唖然とするどころか…
ものすごく冷静だった。
心のどこかではわかっていた。
俺の本能が警告していた。
だから無意識に手が動いて
グラスを変えた。
俺は床に倒れている葵さんを抱えあげて
ベッドに寝かせた。
心音、脈拍を確認する。
「……睡眠薬かな…」
葵さん……
俺に何しようとしてたの…
俺がグラスを変えなかったら、
俺は今頃この人に……
冷たく見下ろして、
俺はサイドテーブルのメモ用紙に
"寝ちゃったようなので帰りますね"
そう書き残して部屋を出た。
もう何も信じられなくなった。
いや…
初めから何も信じちゃいない。
それでも…
こんな世界でも少しくらい何かを信じていたかった。
俺は何のために、誰のために
何をどうするために存在しているのか…。
俺自身の何もかもを否定したくなった。
それでも必死で何かを追い求めて…
必死で何かに縋りつこうとする。
こんな俺の足がもつれないように。
頭に浮かんだのは
レオナ
ただ1人だけだった。