第11章 hesitation ■
ホテルかぁ…
って思ったけど、葵さんに限って妙なことはないという根拠の無い確信があった。
だから俺はほかのアフターを断って彼女を優先した。
確かにここ最近いろいろあって
少し疲れていたのは事実。
彼女なら聞いてくれると思った。
部屋に行くと、彼女は笑顔で出迎えてくれた。
テーブルにはワインが注いであるグラスが2つ。
「お疲れ様、龍也くん。
もうお酒は嫌かしら?」
「いえ、全然。いただきます。」
正直言うと、お酒は嫌に決まっていた。
だってさっきまで仕事でさんざん飲んでたんだから。
でも、せっかくこうして用意してくれていたものを飲まないわけにも…
ワインなんて正直1番嫌なんだけどなぁ…
そう思いながら、とりあえず1口飲んだフリをした。
葵さんはそんな俺をニッコリ見つめた後、
シャワー浴びてくるわ…
と言って浴室に入っていった。
シャワーて…
妙な緊張感が走りだす。
でも今更だよな。
来たのは俺だし。
レオナは今なにしてるかなー。
はぁ…とため息ひとつついて諦めかけた時、
なぜか突然俺の中で、ピンっと何かに射抜かれる感覚がした。
ホストを長年していると
妙に勘が働くことがある。
なんなのかはわからないけど。
俺は目の前にある2つのグラスを
そっと交換した。
そしてしばらくしてバスローブ姿の葵さんが戻ってきた。
彼女とワインを飲みながらいろいろな話をした。
しかし突然……