第11章 hesitation ■
「道路沿いで可憐に咲く小さな花、わずかな開花時期を賢明に生きる花…人の生活シーンには、あらゆるところに花が存在する。気がついてないだけでね。皆スルーしてるから。
動物や人間と違って、花や植物の命は短く限られてるから、今を一生懸命に生きてるんだよ。そんな姿に感銘を受けない?」
俺は花を見たまま小さく頷いた。
不思議な気分だ。
ただの花だと思っていたのに、
そんなふうに聞くと、なんだか…
可憐で美しい花の認識が曖昧になる。
まるで、人間や動物よりも崇高な何かに見える。
「はいっ!撮影しゅーりょー!
じゃー戻ろうか♪」
「ええっ?!はい?!」
俺何もしてないんだけど?!
いつの間にか色々撮られてた?!ってこと?!
俺、ニコリとも笑ってすらないんだけど…?
「もうじゅうぶん撮れたから!
写真はこちらで選ばせてもらうわね!
それがアタシんとこのポリシーだから♡」
よく分からないけど、結局そういうことになってしまった。
確かにレオナも勝手にあのカットにされてたとか言ってたし。
なんかいろいろ大丈夫なのかな、この人。
レオナもいつもこんな感じなのかな?
でも…
なんとなく…
レオナがこの人を気に入っている理由がわかった気がした。
明らかに、
今までのカメラマンとは違う。
いや、そうじゃない。
この人は…
普通のカメラマンじゃないんだ。多分。