第11章 hesitation ■
「龍也くんは、花はお好き?」
「んー…嫌いじゃないですよ?
職業柄、女性に花束を贈ることもありますし。」
「うんうんそうよね。
アタシが見た感じ、龍也くんは本当は、色とりどりの花に囲まれて奔放的な気持ちに浸っていたいと願っているように見えるんだ。」
「え???」
…なにそれ。
俺がまさか、脳内お花畑女子みたいになりたいって?
「花にはね、普通の人間には目視できないけれど、
妖精がたくさんいるんだよ…」
そう言って目を細め、優しげに花をつみだした。
「だから人は、花を見ると癒されるし、貰うと元気になる。仏花もそうだし、お見舞いで人に花を持っていくのも、そういうことなの。本当に人に力を与えるんだよ、花の妖精がね」
この人には、俺が、
元気がないように映ってるんだろうか?
「花はアクセサリーや洋服と違い、いつまでも残るものじゃない。綺麗に花を咲かせるためには、お手入れも大切だし。
そんな儚い美しさを大切にするのは、心が綺麗で優しい証拠。龍也くんはそうだと思うのよ。」
ハイと言って渡された何輪かの花を受け取る。
儚い美しさ。
その色とりどりが俺の目の中にある。
ジッと見つめると、陽に照らせれてキラキラ輝いていて。
本当に妖精が見えるような気もした。
「花は見ているだけで、心がスッと綺麗になるし、カラフルな花や観葉植物、自然界に存在するエネルギーは、ストレス解消の作用もあるんだ。花を見て色々感じるのは、実は心が癒しを求めているサインなんだよ」
「へえ…」
こんなふうにちゃんと花を見たことなんてない。
言葉では言い表せない気持ちが込み上げてくる。