第10章 thought ■
「いいか、夏樹。
くれぐれも余計な話や脱線話とかやめてくれよ?」
「わーってるわーってる。龍也くん。
クライアントには俺本気で向き合ってんですから。
これお仕事なんで。」
そう言ってスーツのネクタイを正す夏樹。
一見チンピラ弁護士みたいだけど、
まぁこいつはこう見えて俺が認めてるくらい信用おける真面目な奴だからきっとレオナに会わせても平気だろう。
扉を開けるとレオナが撮影に行く前のワンピース姿で立っていた。
髪は撮影時にセットされたまま来たのだろう。
長い髪をハーフアップの巻き髪にしていてラメまでついている。
化粧も撮影時のものだろう。
行く前はスッピンだったから。
手にはバーキン。
「お疲れ。ヘアセット良い感じじゃん」
「うん、ごめん。このまま急いで来ちゃって…
やっぱ直してきた方がいい?」
レオナはさっそく初対面の夏樹のことを気にしているようでコソコソ言った。
「大丈夫大丈夫。そのままで。
はい。入って。リビングにもう居るから。」
そう言って部屋に入れた。
少し不安そうな面持ちだから、俺は
「緊張することマジないから。友達だしあいつ。」
と言って笑顔を向ける。