第10章 thought ■
「なぁでも、悪いけど、
俺と仕事の契約するからには本名じゃないとダメだからな。」
突然真剣な顔になり、メガネをクイッと傾けてきた。
「うん。わかってる。」
つまり今日、これから、
レオナの本名を聞くことになるかもしれない。
「隼人、じゃなくって龍也…
お前今夜も仕事だろ?あとその、レオナさんも。
大変だなぁ…。
昼夜逆転どころか24時間人間じゃん」
「まあね…もう慣れたよ…
お前こそ大変だろ。腕のいい弁護士なんだから」
「んーそうだな、いやどうだろ。かなり忙しいけど最近この業界微妙だからねー。まぁこう忙しい俺はある意味いい方かもな。
今なんて、人口自体が減ってるから訴訟も減少傾向だしなー。あとは金銭的な負担もあって自分らで解決しようとする人増えてるし。」
夏樹は心底ウンザリ気味で
ソファーにダラけながら続けた。
「はー、最近なんか流れ作業みてぇに思えてきたわ。
まず依頼人から事情を聴取して〜その裏付けを取って周辺状況を調査して、有利な証拠を集めて、んで判例を収集して、弁護方針や法廷における答弁内容とかを纏めてさ〜…」
1つの事件だけでも作業量は相当なボリュームだろう。
一般的に弁護士はそうした案件を一人で数十件抱え込み、同時並行で仕事をこなしてることくらいは俺でも知ってる。
「そもそもさー、弁護士は他人のトラブルを引き受けることが生業なわけじゃん?弁護士のところを訪れる依頼人は、借金や離婚、相続、交通事故とか自分では解決できないレベルの問題を抱えてるからさ、
そうした難問を解決に導くことが弁護士の役割である以上、仕事から受けるストレスが重すぎて、禿げそうになるわ。
あー将来は俺、親父みてぇにツルピカ弁護士なってるかも」
俺はその言葉に、不謹慎ながら噴き出してしまった。
だって夏樹、お前のスキンヘッドって
完全に輩…