第2章 encounter
「……そんなもんでいいの?
酒を飲みなよ。あぁ、シャンパンがいい?」
「いえいえ、ちょっと僕飲みすぎてるから。
はい、乾杯っ」
「ほう…ナチュラルな自慢。乾杯」
カチンとグラスの音が鳴る。
レオナは心底疲れているようで口数が少なくて、本当にトーク力があるのか?と思ったけど、考えてみたらきっとほぼ無理やりここへ連れてこられて、彼女にとっては今、勤務外なんだろうと思った。
だから少し同情してしまった。
勤務外にわざわざまた同じような場所に来て、話したくもない奴らとお喋りなんてしたくないだろう。
「それにしても、レオナさんが来てくれるなんてすごく光栄。あ、〇〇雑誌見ましたよ。あの赤いドレスすごく良かった」
そういえば…と思い出した雑誌の話題を降ってみた。
それはいわゆる若い女性に向けたファッション雑誌だ。
俺は仕事柄、女性雑誌をよく読むようにしている。
そこにはたまにこの子が載っているのを何度も見てきた。
もはやこの子の存在は世間で言えばモデルの域なのだ。
「あぁ…あれ…私がプロデュースしたってことにされてるやつね」
「あ、違うんですね?」
「違うね」
「ふふ、分かります。僕も、メンズファンデの広告塔にされるために勝手にそうされてましたから。開発会議なんか1度だって参加したことないのに」
この時、レオナが初めて少し笑った。
その笑顔があまりにも妖艶で美しくて、これだけで大抵の男はイチコロだろうなと思った。
単純に、もっと見たいって思った。
で、俺の客にしようなんてことはだんだん失せてきた。
ていうかそんなことしなくても嫌というほど俺の上客はいるし、しかもこの子は落とせないだろうと本能で分かった。
そして、同業の異性と話すのって、こんなに楽で楽しいんだなと初めて知った。