第2章 encounter
「こんばんは。クラウス店へようこそ。龍也です。
お邪魔してもいいですか?」
にっこりと笑って自己紹介をすると、
レオナじゃない方の女がどうぞ。と言ってから、
「うわぁ〜!ていうか龍也さんじゃん!
生で見たの初めて〜っ!やっぱかっこい〜!
えーやば!超ラッキーじゃん!やっぱり大谷社長いるから店長が気を利かせてくれたんじゃないー?」
と、黄色い声で隣のおっさんに言った。
…いや違うんだけどね。
気を使ってるのは、こっちのレオナ嬢にだよ。
あとその発言、そのおっさんを前にして言っちゃダメでしょ。って思ったけどおっさんは「おお〜」とか言って笑顔だ。
まぁたまにいる。こういうホスト好きの男性客は。
たまにホストに来てホストをからかったりすることに優越感を感じているタイプの客だ。
心の中で苦笑いしてから言われた通りにレオナの隣に座った。
「はじめまして。レオナさんですよね。」
彼女はゆっくりとこちらに顔を向けた。
完全なるその無表情に、一瞬だけ鼓動が跳ねた。
持論だけど、美人の無表情ほどゾッとするものはない。
「…あー…知ってるんだ」
少々疲れたようなトーンで目を逸らされた。
「もちろん存じ上げております。有名人ですから。」
俺は綺麗な笑顔を崩さず、彼女のその一挙一動を見つめる。
「…あなたほどじゃないと思うけど」
「え!光栄だなぁ!僕のこと知ってるんですかー?」
「当然です。」
レオナはニコリとも笑わずグラスのストローに口をつけている。
飲んでいるのは明らかにジュースの類だ。
好きなの飲んでいーよ。
と真顔のまま言われたのでレオナの飲んでいるものと同じ桃ジュースを頼んだ。